はやくおとなになりたい

短歌とぶんがくと漫画を愛する道券はなが超火力こじつけ感想文を書きます。

羽虫群 批評会 ふんわりレポ2

道券なりに

 私は虫武さんとはお会いしたことはなく、ひととなり?にもあまり触れる機会がなかったので、歌集を一生懸命読み込んでの参加でした。 

 「かわいがられすぎるとあやうい」、「作者像に頼るとあやうい」という見解が出たように、『羽虫群』は、1冊を通して窺える魅力的な作者像が印象的でした。自信なさげに肩を縮め、閉塞感と絶望にあえぐ様子、さりげないユーモアや、他人への肯定的な視線を忘れない清楚さ、つつましさ……(周囲から愛される筆者ご本人と、歌集から窺える愛すべき作者像を混同していないか、私はちょっと自信がありません。理由は自分でもよくわからないけれど、そこは混同してはいけない気がします)

 この魅力は、しかし、技術の高さがあって初めて活きているというのが、批評会に参加させてただいてよくわかりました。染野さんの仰るように、『羽虫群』は多様な末尾、絶妙なてにをは、題材選びなどの技術力の高さがあります。1首1首に隙や傷がないからこそ、読者は安心して、作者の可愛さに悶えることができたのだと思いました。

 私は連作や歌集をひとまとまりとして見るのが苦手で、1首1首に対する個別の感想だけを携えて乗り込んでしまいました。しかし、みなさんの見解をお聞きして、1冊のあ歌集の印象が立ち上がってくるのが、とても刺激的でした。

 1冊を通した印象の検討と、1首1首の精細な検証の二つを平行することで、改めて『羽虫群』の魅力(愛すべき作者像と、それを支える高い技術)が立ち上がってくる。その現場に居合わせることができたということが、私にとっては何よりもありがたい批評会でした。

 あんなに大きな会を開催されるのは、大変だったと思います。主催してくださった空き家歌会の皆さま、とても勉強になるお話を聞かせてくださったパネラーのみなさま、ご一緒いただいた参加者のみなさま、素敵な歌集を作ってくださった虫武さんをはじめとする『羽虫群』を作られた方々、ありがとうございました。