現代歌人集会秋季大会 うろおぼえレポ1
短歌についてのお話をたくさんお伺いできて楽しかったです。名前しか存じ上げない方のお顔や、久しぶりにお会いする方のお顔を拝見でき、とてもうれしかったです。
1、選考経過
江畑實さんから選考経過が発表されたのですが、最初のほうでまごまごしてしまい、うろ覚えになってしまいました。印象的だったことをふんわり書きます。
・調べが単調だと、読者をひきつける力が弱い場合がある。
・韻律を整えるのは大きな魅力。かつ、それを崩す技術があれば高く評価をされる。
・古今東西の古典を引くことで、知的世界が広がり、歌集の世界?が豊かになる。
・日常の延長としてだけではなく、精神解放が期待される?題材がある、という見方もある。
・結婚出産という一大イベントにまつわる歌を唐突に始めてしまうと、損をするという見方がある。
2、受賞のことば
大室ゆらぎさんの受賞のおことばから、印象的だったものを引きます。
・個人が「われ」を表現するものでない短歌が増えてきた。定型を選んだ時点で、「われ」を手放しているという見方もある。そういうありかたもいいのではないか。
・時代は、本質は、些末なものに宿る。そして、人工ではない自然のものに。
・うつくしいことは、たいせつなこと
定型を選んだ時点で「われ」を手放している、というのが印象的でした。私は「夏野」で初めて大室さんの歌を読ませていただいたのですが、牛がいる気がする歌や、茂みで何かが死んでいる歌など、自然を脚色せず自然のまま描かれるところが好きでした。本質は些末に、そして自然に宿るというお言葉とあわせて、なんとなく、自然も定型と同じく「われ」を「われ」以外とともに大きく包む存在で、そういう大きな流れを意識されているのかなあと感じました。
3、基調講演
「佐太郎短歌の真似しかた」という題で大辻隆弘さんからお話がありました。
〇何も足さない言葉を入れる
・字数が足りない時、説明や想像、比喩や小主観?を入れるとよくない。クッションのような、意味のない、調べのいい、「何も足さない言葉」を入れる。
〇助詞をいじくる
・佐太郎は助詞のアクロバット。助詞を、本来の使い方以外の使い方で用いる。
・佐太郎「感情のひだの痙攣を描くのが短歌」
・主語変更の際用いる「ば」を、主語が変わっていない文脈で用いている。このあてどなさに、主題のあてどない感じがよくあう。
〇見えないものを見る
・誰もが見たことあるけど詠まないものを詠む
・自分で自分の姿はふつう見えないけれど、それをあえて詠む
・「自分がいない」という情景を詠む。ふつう見えない。
切り口はカジュアルで、語り口も軽妙だったけれど、こうやって示されるまでの道のりは全然カジュアルでも軽妙でもなく、膨大な考察と研究の結果なのかなという感じがしました。短詩は言葉が少ないから、一字一句おろそかにせずこうやって迫っていくことで、いい歌とそうでない歌の紙一重の違いが明らかになっていくのだなと思いました。