はやくおとなになりたい

短歌とぶんがくと漫画を愛する道券はなが超火力こじつけ感想文を書きます。

2025年やりたい100のこと結果

 

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13 写真なし

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16 写真なし

17 これと、I am not architectの薄紫のトートバッグ

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20.21.24 写真なし

23.25.52

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27.29.30.33.40.46 写真なし

47

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48.49.52.54.写真なし

55.inspicを有効活用しました

56.ビブリアにお世話になりました

57.wearとStyleHintを駆使しました

59.手帳にイラストを描いておぼえました

60〜63.努力はしました

64.藤子F不二雄先生っぽいな〜と思っていたら登場人物も言ってて「おお」と思いました

66.おじいちゃん先生の可愛げみたいなものにやられてしまいました

67.氷魚くんが「本当に大切な人に向ける表情」をカメラの前でされていて俳優さんってすごいな…と思いました

68.切り口がキャッチーなので不勉強な私でも取っ付きやすくてありがたかったです めちゃ勉強になりました

69.ラストマイル、悲惨な現実を希望で乗り越えようとする足腰の力強さが印象的でした

70.若い二人の俳優さんの生命の輝きが凄くてだからこそ言葉にならなかった

72.歴史的出来事を当事者として経験した人の語りに、歴史って血の通った人間なしには積み重ねられないし語られないんだな…と思い知らされました そして聴く側の心にも血が滲む…

74.音楽がリチャードクレイダーマンだった!

76.手塚治虫が年若い人たちのために心を砕いた感じが伝わってきた 王子として生まれたのに運命の悪戯で盗賊になった人が推しでした

77.zinbeiさんのカバー版を探し回り、地下鉄四条駅のくまざわ書店さんで見つけました。寝る前に数ページずつ読み進められる親切設計でした

78.おもしろかった! エイミーベンダー『燃えるスカートの少女』を想起しました

79.『菜食主義者』、女として生きる上で出会う抑圧をつぶさに描いているのに美学のようなものが遠くで香って凄みがありました

82.文学youtuber梨ちゃんさんが推されていたので読みました。『1R1分34秒』のたゆたうような音楽的文体が青年の自意識に溶け込んでゆく感じが印象的だった

84.髙良真実さんがpodcast「短歌川柳耳学問」で推されていたので読みました。混ざるはずのない多くの時代や個人が端々で溶け合うような語りに乗せられて、気づけば沖縄の長い時間と痛みと生の輝きに伴走している、すごい読書体験

85.推薦入学だから規律を守って学校生活を送りたい登場人物が、主人公のために一緒に溺れようとしてくれるところが、頑固で健気で青臭くて本当に愛おしかった

87.海外の若者の話が中心だが、現在の若者を考えるための補助線になるようなことがたくさん書かれていて面白かった

92.海外で経験された生活が生き生きと描かれていて、心が明るくなった

96.『これやこの』金色に変身せんとする狂気老いたる銀杏を陽の瞻(まば)りをり

ただの擬人化ではなく対象と自分が溶け合うようなまなざしが印象的だった

98.『ふりょの星』血が滲むまで孫引きしたい

こちらの視線から身を翻すような軽やかさに貫かれながら、ふいにピッと痛みを共有される感じが印象的だった

99.『はじめての近現代短歌史』本当にありがとうございました、何回聞いても理解できなかった子規〜岡井隆の流れがふんわり捉えられました

100.やったけど少なかった 来年は10回くらいやって歌をためたいです

 

 

2025年に読んだ漫画

去年の年末に読んだかもしれないもの、途中まで読んで忘れていて今年続きを追ったもの等が入り混じっています。

ネタバレには配慮していません。

うろ覚えで書いている箇所があります。

 

◼️ありす、宇宙(どこ)までも/ 売野機子

 セミリンガルで、学校での学習や人間関係に悩みが多いありす。彼女の「宇宙飛行士になる」という夢に、同級生の犬星くんが伴走する物語。ありすの頑張りが犬星くんの希望にもなるという構造に、励まされる。売野先生はデビュー短編集「薔薇だって書けるよ」から大好きです。

 

◼️ぼくらの/ 鬼頭莫宏

 少年少女がパラレルワールドの住民とロボットで戦う物語。負けた世界は滅亡し、勝ってもパイロットは死ぬという地獄のような設定だが、悲劇性を過剰に煽らない作風で、後味は不思議と爽やか。死というスポットライトが、少年少女たちのこれまでを照らし出す。

 

◼️遥かなるマナーバトル/たむらゲン

 マナー違反を相手に指摘されると電流が走る競技、マナーバトル。主人公マナは父の死のきっかけとなったマナー講師さえ味方につけ、大会を勝ち進んでゆく。能力バトル系少年漫画の枠組みを借りてはいるが、緻密に作り込みすぎないゆるさが良い。パロディや悪ふざけも多彩で、疲れている時も笑わせてくれる。

 

◼️アフターゴッド/ 江野朱美

 IPOと呼ばれる神に侵略された日本で、友人を神に殺された少女和花が、対神科学研究所職員の時永とともに、IPOを滅ぼすために奮闘する。話が進むうちに、自分が時永と結ばれるまで時間を巻き戻し続ける呪いをかけた魔女(パラレルワールドの和花)と、呪いを解きたい時永の意思の対立が、物語の軸になりつつある。テーマは「自身の手に余る欲望」だろうか。次の展開を全く予想させず、読ませる。

 

◼️ふつうの軽音部/ クワハリ、出内テツオ

 ページをめくらせる力がすごかった。最初は主人公鳩野を陰で崇める匣ちゃんの策謀の凄まじさで引っ張っていたが、徐々に鳩野の情熱が周囲を奮い立たせる場面が増えていった。邦ロックの歌詞が物語にはまって気持ちいい。

 

◼️マリッジトキシン/ 静脈、依田瑞稀

 殺し屋の名家の跡取りとして生まれた主人公が、家族から圧力をかけられ、結婚詐欺師の助言をもとに婚活をする物語。嫌味のない登場人物たちや、前向きに他者を尊重する主人公の姿勢は、読む上での安心感を担保している。「ド任せあれ」のような特徴的な台詞回し等、キャラクターの演出に作者の強みがある。

 

◼️エクソシストを堕とせない/ 有馬あるま、フカヤマますく

 人間最強の主人公「神父くん」と、サキュバスであることを隠して彼に近づく少女イムリが、徐々に惹かれ合う姿が描かれる。男女の身体の違いや、心の惹かれと身体接触への欲望のズレ、異性愛以外の愛なども描いて真摯な印象。聖書のエピソードを翻案したような回も多いが、私は聖書について詳しくないので、解像度の高い感想を言うことができない。

 

◼️推しの子/ 赤坂アカ、横槍メンゴ

 男女の双子が母の死の真相を追って芸能界に入る話。登場人物たちが芸能人としてステップアップしていく過程は、文化系スポ根とでも言うべき勢いがあって好きだった。未成年の性被害について問題提起しようとする姿勢には期待したが、掘り下げは不十分という印象。相談先の表記や専門家の監修をつけたほうがよかったのでは。

 

◼️3月のライオン/羽海野チカ

 中学生でプロ棋士になった零と、和菓子屋の三姉妹、棋士たち等周囲の人々の物語。一人一人の登場人物の後ろに人生という分厚い時間が流れていることを感じさせる点に、毎巻圧倒されている。

 

◼️波よ聴いてくれ/ 沙村広明

 話のうますぎる一般人ミナレが、北海道を舞台に、ラジオのパーソナリティーになってゆく物語。ミナレの悪態交じりの軽快な台詞まわしが気持ちよく、それだけで読ませる。題材であるラジオ放送への取材が真摯で、災害報道の回は特に読み応えがあった。

 

◼️服を着るならこんなふうに/縞野やえ、MB

 ユニクロで黒いスキニーパンツを一本買うところから始まり、日常着の着こなしから、スマートカジュアルの考え方、古着の取り入れ方、服のお手入れから人それぞれの服との関わり方まで、ありとあらゆる観点から「服を着る」ことが解説されている。ここから得た知識で私が一番重宝しているのは、ドレスとカジュアルの考え方です。

 

◼️宝石の国/市川春子

 愛されたいという思いから周囲のために奔走し、翻弄され、献身ゆえにひとりぼっちになった主人公フォスが、最終巻の最後で、新たな友人への献身に消えていった姿に言葉を失った。手塚治虫「火の鳥」を思わせる、ままならないこの世にきらめく命を見送って呆然とするような読後感だった。

 

#マンガ

歌人の二泊三日パッキング〜真夏🍉編〜

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通勤に使っている大きめリュックを、真夏の二泊三日につれてゆきます

後ろはお留守番のお二方

 

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同じかばんを持っているひとがいるかもしれないので、目印も持ってゆきます

写真は装着イメージ

 

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左から

バッグインバッグ、

ヘアアイロン、

美容系の巾着、

後ろが着替えの巾着

スマホと1日目のハンカチは、服のポケットに入れました

 

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バッグインバッグのなかみ

これと水筒、お弁当で通勤しています

マスクケースとティッシュケースは手作り

 

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ポーチのなかみ

飛行機に乗るので、かみそりは置いてゆきます

 

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美容系の巾着のなかみ

 

着替えの巾着は、

パジャマ代わりのTシャツワンピを入れるか悩みましたが、リュックが膨張するので断念

ホテルの服で寝ます

 

その他こまごまと

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ハンカチのように薄いトートバッグ

大きな荷物を置いて移動するとき等に使います

 

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歌会用品、夏用品など…

 

あと、上賀茂神社で航空安全の御守を授かってきたので、持ってゆきます✈️

 

歌会たのしみ!

みなさんも、よき夏休みをお過ごしください!

「君たちはどう生きるか」よかった

「君たちはどう生きるか」観てきました!
ごりごりにねたばれするので気をつけてください!

久しぶりの映画でテンション上がってポップコーンS買ったらめちゃでかくてひるむ。隣席の観客の方に絶対「こいつめちゃ食うやん」と思われていたと思う。戦時下を舞台にした冒険活劇であることと、声優さんとED曲のアーティストさんのお名前くらいを前情報として観に行きました!以下の感想に出てくる台詞などは、細かいところがあやふやです。

大叔父の「悪意に染まっていない石を積み上げてほしい」という依頼に対する、まひとの「僕はもう悪意に染まっている」という返しが印象的だった。戦時下の物語であることがここで効いてきていて、戦争という人間の大きな過ちは確かに悪意から来るものなんだけど、そこに立ち向かおうとしても、悪意に染まらない人間はいないので、違う方法を考えないといけない。まひとがその違う方法に「ともだち」を持ってきたのが、この作品の考え方なんだよなあと思った。他者との相互理解で悪意を乗り越えていけば、戦争は避けられるというメッセージ、あるいは祈りだったのかなあ。

今まさにこの地球上で行われている戦争のことを考えたとき、この祈りはあまりにささやかで、実現不可能に思えてしまって、映画が終わった瞬間、宮﨑駿監督はこうなってしまった現実に絶望しているのかとさえ思ってしまった。でも、帰って落ち着いて考えたら、ささやかでも、積み重ねていかなければいけないんだな…という感じに着地したし、宮﨑監督はずっと未来を生きる子どもやいのちを大切にしてきた人だから、信じようと思った。

後は細かいところで、
①宮﨑監督は少年少女や中年男性の冒険は描いたことがあるので、中年以降の女性の冒険も描いてほしいと思っていたから、おばあちゃんと塔に入ったときはテンションが上がったけど、いつの間にかおばあちゃんが若くなったりお守り人形になったりしていて、がっかりした。

②炎に巻かれて亡くなったヒミさんが「火はいいよ!」と言ったことに面食らったけど、火は確かに調理に使うなど生活、生命に直結する面もある。ヒミさんは火を使ってわらわらを助けているし…機械を悪い目的で使う者が悪いのであって機械自体は悪くないという物語を前提とした、ワンピース(著:尾田栄一郎)のフランキーの「存在そのものに罪はない」という台詞を思い出した。あと、宮﨑監督は「風立ちぬ」にもどこかそんな思いがあったのかな。いい飛行機を作りたかっただけなのに、戦争に使われてしまって…的な…

③新しい母親や、彼女と自分の父の間にできた弟妹を心情的に受け入れることを少年の成長として描くみたいなことは、この作品に限らずやめてあげてほしい。まひとがナツコお母さんって呼ぶところ、胸がぎゅっとした。ここで頑張るべきは子どもではなく、大人だと思うので…

④ ジブリの少女主人公っていつも周囲のために料理したり年下のきょうだいや父親の世話を焼いたり働いたりしているけれど、まひとは全然そうじゃなくて、子どもらしく生きることを許されているな…と思った。女の子も子どもらしく生きさせてあげてくれ〜。1番子どもっぽかった女の子は千尋だろうけど、まひとは千尋と同じく労働を通して、若干たくましさを獲得していたね…

⑤鳥が全体的に生々しくて、ギャアギャアうるさく迫ってくるペリカンや、鳥糞にまみれる窓枠や大人たちは、これまでになかった表現だな…と思った。カエルに覆われるほうがまだ従来のジブリっぽい。監督、通勤途中に鳥に落とし物おとされて嫌な思いとかした?

⑥1番好きな台詞は「インコにシチューにされちゃうよ♡」。字面が強い。インコは後ろ手にナイフや斧を持ってまひとの退路を塞いでいたり、捕まえたまひとの目の前で刃物を研いでウインクしたり、近年のジブリ作品には珍しく生々しい剥き出しの暴力だった。同調圧力というか、大衆心理の象徴みたいな感じなのかな。集まって声を揃えているうちに怖いこともできてしまう的な。最後積み木を崩したインコも「そんなこと(悪意のない世界)のために我々を裏切って!」みたいに言ってたもんね。面子を大切にする権力者のメタファー…

戦時下という舞台設定を鍵として読み解いていくためのメタファーの集合としての異世界だったので、こじんまりとまとまってしまっていた印象ではある。海があって船が浮いていたけれど、あの船の向こうが想像できない、あそこで世界が終わってしまっている狭さ。千と千尋の湯屋周辺もそういった役割の異世界だったけど、海の向こうにも神様の住む土地がありそうな広さがあった。

あと、青鷺があまりよくわからなかった。偽の母親を作って、触れたら溶けてしまったのは、美しいだけじゃない母親の記憶、あるいは忘却を遠回しに表現しているのかな。それと向きあうきっかけを作った憎たらしい他者に立ち向かうことが少年の自我の芽生えであり、その他者と和解することが少年の成長かつ戦争に立ち向かう唯一の方法なのか。青鷺にはちょっと思いつかないような不気味なデザインと、それを乗り越えるチャーミングさがあっただけに悔しい。いつかわかるといいな。

こういうの書いてると、批評の勉強をしてみたいなあと思う。いつも感想がとっ散らかってまとまらないから…
でも、ジブリというか宮﨑駿監督作品は本当に好きなので、新作が見られたことにシンプルな喜びがある。反戦、少年の成長、周囲からの愛情の自覚。シンプルだけど骨太なメッセージを子どもも楽しめる形で直球で投げて寄越してくれる感じ、偉大だなあと思いますよ。

【文舵②】猿沢池

猿沢池

 

 春日若宮おん祭りの日の猿沢池はたこ焼きやベビーカステラを求め る人の頭が黒黒とひしめいてまるでそれ自体が意思を持った生き物 のようにうねっては行き先を失って詰まり散っては凝り固まりを繰 り返しているが娘の奈緒がそこへさっさと入っていってしまったの を追わず自分は少し離れたところで待つことにした真美子はその人混みを 猿沢池を見下ろす石の大階段の上から見ているうちに娘の奈緒に似 たカーキのブルゾンを着た少女に目を留め見るとはなしに眺めてい たところ少女は友達らしき坊主頭の少年数人と短く会話をして的当 て屋の前で塊をなす彼らを押しのけるようにすり抜けた後たこ焼き の屋台の前で首を大きく伸ばして人だかりの間から様子を伺いあき らめてはふらふらと人混みのなかを戻ることも進むこともできずに 漂うというより滞っているように見えたが背の高い男が後ろから彼 女に話しかけるのを見て心臓をわしづかみされたように感じた真美 子は大階段を下りて人混みのなかへ飛び込んだところまではよかっ たものの地面に他人の足がないところを探すほうが難しいような混 雑のなか一歩踏み出すごとに違う人の腕や背中と自分の腕や腹を当 てながらめいめい別の方向を向いているのに互いの呼気を吸いあう ような空間を歩いていくも自分の思うように進むことも止まること も戻ることもできず奈緒に似た少女は奈緒ではなかったのではない かとか奈緒に話しかけた男は教員など奈緒にとって危険のない知人 なのではないかとか自分の判断に自信がなくなってきてそれでも人 混みは時に真美子の背中を驚くような乱暴さで横や前に押しのけて ゆくから歩みを止めることもスムーズに戻ることもできず頭のなか でただ奈緒奈緒と繰り返しながら真美子は歩いてゆくしかなく半ば 涙ぐんでいたところに「ママやん」 とベビーカステラの甘い匂いをさせた奈緒に声をかけられた真美子 は奈緒の若鹿のように伸びた長い首や美しい黒目を一瞬茫然と振り 仰ぐしかなかった。

 

『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』アーシュラ・K・ル=グウィン(大久保ゆう訳)フィルムアート社 の「第2章 句読点と文法」の〈練習問題②〉をやってみました。

 

 

 

 

【文舵1②】祈った

祈った

 

 このバスは目的地には着かないと気がついたのは、信号待ちのバスの窓から、灰色にけぶる鴨川が見えた時だった。血の気が引くとはよく言ったもので、澤井はその時、 嫌な冷えに身体の芯が軋むのを感じた。澤井は目的地行きの正しいバスを調べ、 仕事相手に謝罪のメッセージを打ち、 降車ボタンを押し、膝に乗せていた上着に袖を通した。あとは祈った。 ひたすらに祈った。バスを降りた時も、 四車線の道路を強気で渡り終えた時も、 目的地行きのバスが来るバス停に立った時も、澤井は祈った。きりきりと祈った。風に揉まれた銀杏の木が、 あたりをざあっと黄色く染める。 水たまりを轢いてバスが近づいてくる。 遅刻するのはわかっていた。鼻の奥がつうと痛むのを感じながら、澤井は祈った。 胃の腑がねじれてちぎれそうなくらい祈った。 闇雲に祈った。ただただ祈った。できるだけ早く、1秒でも早く、目的地に着きますように。

 

 

 

『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』アーシュラ・K・ル=グウィン(大久保ゆう訳)フィルムアート社 の「第1章自分の文のひびき」の〈練習問題②〉をやってみました。強烈な感情を抱いている人物のほうでやりました。

 

 

【文舵1】二人三脚

二人三脚

 

 私の足首と自分の足首を襷で結んでいるアヤちゃんのつむじに、 私は「彼氏できた?」って聞きたかった。やめたのは、 二人三脚が始まる直前に聞くべきことではないと思ったからだ。 昨日二人で帰る途中、 なぜか卓球部のタナカが割って入ってきた時も、 私は聞きたかった。「なんか最近タナカと仲良くない?」って。私の最寄り駅で私が下りた後、ドアが閉まる瞬間、タナカがアヤちゃんの腰のあたりに手をやったのを見た時も聞きたかった。「タナカとつきあってんの?」って。

 立ち上がったアヤちゃんの髪からは、 焼きたてのパンみたいな匂いがした。 私たちは互いの腰に手をまわした。そのほうが、 肩を組むより視界が広くなって、気持ち良く走れるからだ。 私と同じく柔らかな肉のついたアヤちゃんの腰。 その腰に近づいたタナカの手を思い出して、 今度は喉まで出かかった。「アヤちゃん、彼氏できた?」

 ピストルが鳴る。 アヤちゃんが焦って踏み出した左足にやや遅れて、 私も右足を出す。いっちにい、いっちにい。 五歩も歩いたところで、視界の端から他の選手たちの頭が消える。 私たちは目立って遅い。 アヤちゃんが喉の奥で低い笑い声を立てる。 私はアヤちゃんのこの笑い方が好きだ。 映画で若手俳優のすすり泣きがうますぎて逆にそこしか印象に残らなかった時とか、便覧の芥川龍之介の写真の解像度が高くてアー写ばりの完成度だった時とか、そういう時の笑い方。終わってほしくないと私は思った。 アヤちゃんと一緒の高校生活は楽しかった。他のどの子といる時よりも、ずっと楽しかった。

 九月の陽射しを受けて、グラウンドはどこまでも眩しい。 ゴールした後、私は、アヤちゃんに「彼氏できた?」 と聞くのだろうか。もし「できたよ」と言われたら、私は一体、 この光の海みたいな午後に、私は。

 

 

『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』アーシュラ・K・ル=グウィン(大久保ゆう訳)フィルムアート社 の「第1章自分の文のひびき」の〈練習問題①〉問1「文はうきうきと」をやってみました。楽しかった〜!